V フローリング材の張り付け編

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 下地がしっかり完成したら、いよいよ、仕上げである無垢フローリングの張り付けです。
 工事の際、無垢材ゆえに気を付けなければいけない事は、材を割ってしまわないようにする事と、多湿時の膨潤対策です。 杉・桧材での「材を割ってしまった」という失敗は、釘打ちをした時に、木繊維を縦裂きに割ってしまう状態がほとんどです。 これは木目の真っ直ぐ通る針葉樹で起こりやすい現象で、これを避けるには、少し手間をかけて、コツをつかむ事が必要です。 あと、下地施工時もそうでしたが、無垢材は吸排湿性があるため、湿気を吸って膨張した時、材が押し合って盛り上がったりしないよう、ところどころ遊び調整隙間を設けておくのが望ましいです。 
 以上のように、木材特性を理解した上で工事を施すと、より巧く工事が完成します。 無垢材だけに難しい部分もありますが、無垢材ゆえに面白いところでもありますので、楽しみながらがんばってください。

割付と木調合わせ
 まずは仕上げフローリング材の、“割付”を考えます。 割付とは、どのようなパターンで仕上げ材を張り付けていくか?という事です。 『三尺ずらし』や、『一尺とび』、『りゃんこ・ちどり張り』などなど、色々ありますが、素人さんの日曜大工施工では、仕上りが綺麗で工事も簡単になる『一枚張り』をお奨め※1いたします。
 仕上げ材の“張り方向”は、捨貼りと同じく根太と直交※2になるよう張り付けるのがセオリーなのですが、しっかりした捨貼りをしてあれば、どのような方角から張っても、さして問題は無いと思いますので、効率と見映えなどの都合良い張り方向をお考えください。
※1 無垢フローリング材は、木口部分(両端部)にどうしても干割れや、欠け・歪みが出てしまう事があり、施工の際、まずは両木口を吟味して、それらをできるだけカットして使用します。 さらにその接合部分は、張り終わってから跳ね上がりが起きないよう、しっかり抑えの処置を施しておかなくてはなりません。 ですので、木口の接合部分ができるだけ少なく、見えなくなるよう工事するほうが手間は激減するし、見た目もすっきり美しく仕上ります。
※2 基本的に仕上げ材も、木口の接続部が根太の上にくるよう張り付けます。 
 割付を決めたら、“木調合わせ”もしてみましょう。
 無垢材フローリングは天然の木材から削りだした状態の物ですので、それぞれに自然な個性が現れ、なかなか画一的な見た目にはなりません。※3 そこで、より美しく施工したい場合は、まず1枚1枚の木調を吟味し、近似な材を集めて、場所により選別して張っていきます。 例えば木目と色合いの美しい材を集めて、部屋の入り口や真ん中の人目につく場所に敷設したり、逆に色合いや木調が外れる材は、家具下やクローゼット内などの見え難い場所にまとめて張ってしまうなどのちょっとした工夫で、施工後の見映えは変わってきます。
※3 例えば同じ一本の丸太から採取された板材でも、芯に近い材、外縁近い材、先端の方の材、根元材などなどで、ずいぶん印象は変わってきます。 こういった個性がまた無垢材の良さでもありますので、木調合わせといえどあまり神経質に考えず、その自然な見た目を楽しんでください。
 割付と木調合わせが決まったら、計画する施工箇所にフローリング材をある程度“仮並べ”してみて、実際に張った感じを掴んでみます。 この時に、狭く入り組んだ場所などを張る場合は、事故を未然に防ぐ意味で、あらかじめ材の取り回し手順※4など考え、ぶつけそうな箇所に養生を施しておきましょう。
※4 長い材を取り回す時、柱や壁面、天井面にぶつけて損傷させる事がよくあります。 こういった事故防止措置は面倒がらずにしっかり備えておきましょう!

長さ寸法のカット
 フローリング材を、必要な長さ寸法にカットします。 この時、材の両木口(両端)※1をよく見て、割れ・欠けや歪みなどあれば、できるだけその部分を切り落とすようにします。 “一枚張り”する場合は、部屋の端から端までの長さ寸法でカットするだけでOKですが、もし“ちどり”になるよう、木口を接合して張っていくのであれば、長さは慎重に測り、かならず卓上切断機にて正確な直角にカットしてください。 この時できれば、専用の電動工具『ジョイントカッター』※2で、木口を繋げれるように加工するのが望ましいです。 この加工の意図するところは、施工後に木口接続部の“跳ね上がり”を抑え合う事ですので、“ちどり”で張る場合は、ぜひご検討ください。
※1 木口とは、「こぐち」と読み、材の長手方向の端の事です。
※2 電動工具『ジョイントカッター』は、木口同士の接続面に溝を彫って、専用の『ビスケット』という繋ぎ材を接着剤を塗って差し込み、床材を接続させていく道具です。 高価な専用工具なので、日曜大工ではなかなか用意するのは難しいところで、やはり素人さんの場合はできるだけ“一枚張り”で施工したほうが良い結果になると思います。

捨貼り上への張り付け
 寸法合わせが済んだら、いよいよ捨貼り上に張っていくのですが、この仕上げ材も例によって壁際周辺部の“納め”は、材の膨潤時対策として、必ず5o程度隙間を設けるように調整します。 その壁材とフローリング材の接面は、『巾木』を設置して目隠しします。 
 フローリング同士の目地も、名刺一枚挟む程度の隙間をつけて張っていきます。 文字通り名刺を隙間ゲージとして使用すると貼りやすいと思います。床の“鳴き”防止として、フローリング材の裏側に接着剤を塗付※1して安定させます。 この時も、必ず接着剤は木質系床材専用の物を使用してください。 酢ビ系(水系)の、いわゆる白い液剤の木工ボンドは絶対に使わないでください。 接着剤を塗るとき、フローリング材の側面であるサネ部には付着しないように塗ります。※2
※1 ホームセンターなどで市販されている木質系床材専用接着剤は、ウレタン系かエポキシ系剤になります。 化学物質アレルギーなどを懸念される場合は、慎重にボンド使用の可否を判断してください。
※2 乾燥収縮時に引っ張り合い、サネが割れてしまう可能性があり、膨潤対策も機能し難くなるためです。
 弊社既製品フローリングの場合、オスザネ(凸側)の出っ張り根元の上から、内側に向って斜め45度の角度で釘打ち※3します。 その時、直接釘打ちすると実(サネ)が割れやすいので、事前にドリルで釘の太さと同径の“導き穴”を開けておくほうが無難です。 この時、導き穴は捨貼り材まで開けてしまうと釘が効かなくなりますので、できるだけフローリング材のみ開けるようにしてください。 ある程度打ち込んだ後、釘頭はポンチで軽く沈めます。
 タッカーなどの釘打ち機で張り付ける場合も、同様に45度の角度で打ち込みます。 ステープルは捨貼りを大きく貫通しない程度の長さ(38〜50o)を選び、エア圧は試験打ちを何度も行って慎重に調整してください。
※3 釘を使用される場合は、『フロア用スクリュー釘』を使ってください。 この釘は胴部を螺旋状に加工してあり、固定保持力が強いので床鳴りの防止になります。 錆びないようメッキが施してあったり、ポンチを当てやすいようカップ状の釘頭になっている物もあります。
 フローリング材の張り込み作業をすすめていく際、もしオスザネ部分(凸側)を立裂きに割ってしまった場合はそのまま張り込んでしまわず、新品の材に交換される事をお奨めします。 立裂きした箇所を接着剤などで留めてメスザネ(凹側)を差し込むと、その時点では隠されて判らなくなりますが、乾燥時の材の収縮により引っ張られて、さらに割れが広がり、下地まで見えるようになってしまう恐れがあります。 そうなると最悪の場合、サネ同士での抑えあいがなくなるので、フローリング材がめくれ上がってつまずいたりするようになります。 サネの割れてしまった材は、壁際の巾木の下用に廻すなどして、うまくご利用ください。

壁際の納め
 フローリング材を張り込んでいって、最終的な帳尻合わせは、凸側をカットして納めます。 すでに上記のとおり、壁際との隙間は5ミリほど空けておきますので、それらも計算に入れて仕上げ材をカットします。 慣れないと少し難しい作業になりますが、きっちり寸法を測って丹念にカットします。 必ずタテ挽き用ノコギリで挽くようにしましょう。 カットする材をバイスやクランプなどで作業台に固定すると、挽きやすくなります。 長い材を挽く場合は、寸法固定のできるガイド付き電気丸ノコで挽くと作業が楽です。
 施工現場が“真壁造り”の場合、壁際の納めは右イラストのような加工が必要になります。 少し難しいですが、ノミとノコギリを駆使して丹念に納めていきましょう。 
 柱の切り欠き深さは強度を保つ意味でもあまり深く取らず、10〜15oまでにしておきます。 その分、フローリング材のほうを形状に合わせて切り欠きします。 柱の切り欠きの高さ※1は仕上げフローリング材の厚み寸法に合わせ、切り欠き底は下地(捨貼り)の面と揃えます。 
※1 切り欠き高さは、仕上げフローリング材の厚みよりほんの気持ち程度(0.2〜0.3o程度?)小さくしておき、フローリング材の切り欠き部を金槌で軽く潰してからはめ込むと、後に潰された部分が復元して、しっかりと抑えられます。

施工後の養生
 フローリング材の貼付け完了後、竣工がまだであれば、早目に養生してください。 養生シートは防湿性の物がお奨めです。 シートの固定には、養生用テープを使う事になるのですが、化粧面にむやみに粘着テープを貼って置いておくと、その部分に変色跡が付いたりする事がありますので、ご注意ください。 養生シートを貼る場合は、仕上げ全面を覆うようにしてください。 一部露出した部分など、しばらく放置すると、その面と養生された面との色合いにギャップが現れる場合があります。 

まとめ
 仕上げ材の張り込み時に大事にしたいのは、現場での実寸をしっかりつかむ事です。 部屋寸法は図面上ではきっちりした直角や長さになってはいても、実際には微妙なズレ(許容範囲内で)があったりしますので、現場でそれらを把握しながら、寸法合わせしてカットしていきます。 特に最後の壁際の納め部は帳尻が来ますので、何度も“仮並べ”して、当りを付けながら合わせてください。 こういったマメな下準備と柔軟な対応が、全体的に美しい仕上りにつながります。

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