W 吉野杉・吉野桧フローリングのメンテナンス

一般的な杉・桧フローリングのお手入れの仕方を解説しています。
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 無垢材フローリングは一生物です。 扱い方によっては、リフォームや建て替えの時、剥がして再利用できてしまうぐらいの持ちの良い物です。 現在の一般家屋の寿命は、20〜30年などと言われておりますので、そんな事が可能なのか疑問視もされますが、大事に扱われてきた寺社仏閣では1000年以上経ってる木造建築物があるくらいなので、それ相応のメンテナンスを施してあげれば、30年や40年ぐらい(多分もっと)、なんら問題なく過ごせるでしょう。
 それと、無垢フローリングは施工完了の時点で、まだ80%の仕上りであると言えます。 同じく自然素材である皮革製品もそうであるように、使用して“馴染み”が出てくると、どんどん味わいが深まり、月日を経て初めて仕上りを感じる時がきます。 大事にメンテナンスしていくと、さらに“愛着”と、いうエッセンスも加えられていくことでしょう。
↑写真は、とある事務所に敷かれた桧フローリング(生節一等)。 事務所内は通常土足で使用。 築20年以上で、定期的にワックスを塗布しています。

吉野杉・吉野桧フローリングの特徴
 自邸のフローリングとして、永くおつきあいしていくために、張られた素材の特徴を知っておくのも大事です。 ワックスなどの塗装剤も樹種によって専門の物に分けられている場合もあります。
 桧と比べると強度は低く、多少柔らかく感じます。 ゆえに傷付きやすいとこもありますが、この柔らかさが足への感触を和らげ、心地良さを与えてくれます。 含水性が高く、吸排湿作用による伸縮が大きいので床暖房などには向きませんが、その特性は天然の調湿器として自然な室内快適性を与えてくれます。 赤材は腐りや虫食い、変色に強く、視覚的にとても落ち着く色合いになります。
 桧は杉に比べると全体に強度が高く、やや硬質な手ごたえになりますが、その分傷付きにくい感じです。 吉野桧は油精分を多く含み、施工後も表面ににじみ出てきます。 これが天然のワックスとして独特の深みあるツヤになります。 乾燥性が高く、吸排湿作用による伸縮も比較的少ないため、条件によって床暖房設備にも対応できたりします。 虫の食害にも強く、極端な多湿状態に長期にわたって放置されたりしない限り、腐ったりしません。

施工直後の状態
 削りだしたままの杉・桧材は空気や光に晒されると、徐々に淡い黄土色に変わってきます。※ この現象を「日焼け」とかと言うのですが、おそらく紫外線の影響などもあり、日当たり部分は早く焼けてきます。 ですので、均等に色合いを落ち着かす意味で、施工後しばらく日当たり場所には固定物を置かないほうが綺麗に仕上がると思います。 右写真は桧の壁板ですが、施工直後にカレンダーを貼ったため、その部分がくっきり焼け残ってしまいました。 ただ、心配しなくても、数ヶ月〜数年で色合いは全体的に統一感を持って深まり、無垢材独自の落ち着いた風合いになっていきます。 そういった経年変化も楽しみのひとつになります。
※ この変色は異常な事態ではなく自然な変化で、無垢材の視覚的な良さに繋がる過程だと受け止めください。 無垢材は年を追うごとに、とても深い色合いになっていきます。

ワックスなど保護塗装について
 常に吸排湿している無垢材は、呼吸をしていると言えます。 その呼吸にともない、天然の調湿作用や香りの放散を促していますので、もし塗装材を塗られる場合は、ぜひそういった木の呼吸を妨げないタイプの物※を必ず選ぶようにしてください。 それと、吉野杉・吉野桧フローリングには、代えがたい肌触りと香りがあります。 塗装をしてしまうと、その微妙な肌触りと香りが半減してしまいます。 以上の事から、弊社ではそういった無垢材の良さを感じていただくために、とりあえず新設時は何も塗らない素のままの状態で、“木のフローリング”をお楽しみくださる事をお奨めします。 その後、必要に合わせて、汚れやすいキッチンや、湿気の多くなるお風呂周辺(脱衣所・洗濯場)など、早めの対策として、保護塗装を施していきましょう。
※ 弊社からのお奨めは、『OSMOカラー』、『蜜蝋ワックス』などです。 
  塗装方法や詳細は各メーカーHPをご覧ください。 リンクページへ→ 無垢材用塗装材

普段のお手入れ
 普段ははカラ拭きして、たまに湯水を堅く絞った雑巾で拭いてください。 水と雑巾は木繊維に汚れを染み込ませないように、きれいな物をお使いください。 保護塗装されている場合は、塗装材メーカーの指示を参照してください。 OSMOなどの塗装材メーカーからは、専用クリーナーも販売されています。
 余談ですが、古来より床材のお手入れ方法は色々あるようです。 ヌカ(糠)を入れた袋で拭くとか、牛乳で拭くとかありますが、このあたりの効果は定かではありませんのでご注意ください。 

化粧面の再生方法
 無垢材フローリングが一生物になる理由は、磨耗する事があっても剥離する事はないところです。 化粧面の汚れやキズが気になりだしたら、一皮めくってあげれば驚くほど綺麗に再生されます。 集成材や積層材に真似できない良さといえるでしょう。
1、まず凹んだ部分を、無垢材の吸排湿性を利用して膨らまします。 木繊維が断裂しているような傷は完全に消えませんが、凹みはかなり回復し、後にハンドサンダーをかけた後の仕上りがずいぶん変わってきますので、全体的に丁寧に膨らましておくほうが良いでしょう。
【A】 撥水性の塗装を施してある場合は、凹んだ部分の周囲を♯120番ぐらいのサンドペーパーを軽くかけて塗装膜を削り、木が水分を吸いやすくなるようにします。
【B】 凹んだ部分に刷毛などできれいな水を塗り、数分間放置することによって、木繊維に水分を吸わせます。 水分を吸うと、この時点でも、ある程度凹みは戻ります。
【C】 水が材に吸収された感じになってきたら、熱くしたアイロンをそっと当て、その水分をジュッと蒸発させます。 あまり長時間アイロンを押し当て続けると、木表面が変色したりしますので、様子を見ながら少しづつ当てましょう。
【D】 水分の蒸発と同時に、凹みがぽっこりと浮き上がります。 でも、凹みはなかなか100%は消えませんので、残りはサンダーで仕上げるとして、目立たなくなったらOKとします。
2、凹みの処理などが済んだら、中性洗剤を薄く混ぜた水(もしくはお湯)で、布を堅くしぼり、床面全体の汚れを拭きとってください。 その後、部屋の風通しを良くして床面をしっかり乾かします。 床面の油脂分を落とし、サンドペーパーを効きやすくするのが狙いです。
3、乾いたらハンドサンダーをかけていきますが、床面の傷がひどい場合、サンドペーパーは♯100ほどの番手から使っていきます。 この番手だと、けっこう深く削れますので、あまり強く押し付けずに、様子を見ながら少しずつかけていきます。 汚れや傷が程よく取れたら、仕上げ直しとして♯200ほどのペーパーに付け替えて表面を滑らかに整えます。 仕上げは、まんべなく全体にかけるようにすると綺麗になります。 ハンドサンダーを使用すると、粉塵がたくさん舞い上がるのでご注意ください。※ 作業中はマスクを着用するようにしてください。
※ 粉塵がかかると問題ある家具や電気製品等は、古毛布やビニールなどで事前に養生しておきましょう。 
4、ワックスを塗る場合は、掃除機で丁寧に粉塵を吸い取ってから施します。 初めて塗るワックスは、一度どこか目立たない場所に試し塗りして、床材との相性や塗り方などを確認してみるほうが良いと思います。

まとめ
 無垢材フローリングの場合、日常生活で付いていく細かい“傷”などは、できればあまり気にしないで(というか、どうしても傷は付いてしまうので・・・)、素材そのものの持つ感触や雰囲気を大事にしてほしいと思います。 木の呼吸による天然の調湿作用や、その時に放出される独特だけれども自然な香り。光を分散反射するので目に優しかったり・・・などなど、短所をカバーするに余りある良さがあります。

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